服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。
極めつけは何といってもジョルジオ・アルマーニの大ブーム
「イタリアン・ファッション」1982
ファッションの世界にイタリア調の波が、敢然として押し寄せるのは80年代に入ってからのことである。もちろん、それ以前からイタリアン・ファッションに注目する動きはあったけれど、やたらイタリア、イタリアと言い始めたのは、やはり80年代になってからのことと思われる。たとえば1982(昭和57)年に「イタリアン・カジュアル」、略してイタカジという言葉が生まれている。また「イタリアン・アイビー」という言葉もあるが、これらはいずれもアメリカとヨーロッパを融合させたカジュアル・ファッションという意味で用いられたもの。プレッピー・ファッションの次に起こったこうした動きは、まさに「トランス・カジュアル」とか「スーパー・カジュアル」と呼ばれるファッションにふさわしい感覚を持っていた。そして極めつけは何といってもジョルジオ・アルマーニの大ブーム。アルマーニは80年代後半のインポート・ブランド・ブームの象徴となったのだ。