服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。

年代別『流行ファッション』物語:蛍光色を主体にしたよりセクシーなルックスが売り

蛍光色を主体にしたよりセクシーなルックスが売り

「イケイケ・ファッション」1989~1994

イケイケとは日本語のしかも大阪弁で「行け行け」の意味からきたもの。つまり東京でいう「行っちゃえ行っちゃえ」といった意味で、大阪に見るボディコン・ファッションの過激な表現を、1989(平成元)年ごろからこのように称するようになった。東京の「ワンレン・ボディコン」とは異なり、蛍光色を主体にしたよりセクシーなルックスが売りもので、いかにも関西発のファッションという雰囲気を表していた。こうした服装の女の子たちを「イケイケ・ギャル」と呼んだものだが、面白いのはこれがディスコ風俗として東京にも波及してきたことだ。1991(平成3)年5月にオープンした伝説のディスコ「ジュリアナ東京」には、連日このようなイケイケ・ギャルたちが集結し、お立ち台で過激なパフォーマンスを繰り広げる。日本のバブル最後の時代は、こうしたドンチャン騒ぎの中でパラパラ・ダンスとともに過ぎていった。