服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。
中世の華麗なパイレーツなどの伝説的な英雄を模した格好(海外の1980年代ファッション・トピックス)
「ニュー・ロマンティックス」1981
1980年の末から81年にかけてロンドンに現われた、若者のファッション・ムーブメントのひとつ。アダム・アント率いる「アダム&ジ・アンツ」というロック・グループやスティーブ・ストランジといったロック・ミュージシャンたちが中心となって展開されたもの。古きよき時代の英国をパロディーとして再現させることが大きなモチーフとなっており、中世の華麗なパイレーツ(海賊)スタイルやロビン・フッドなどの伝説的な英雄の服装を模した格好がよく見られた。パンクやニュー・ウエーブが持つ反体制的な雰囲気は少なく、むしろ英雄崇拝的できわめてファッショナブルであるところが、「ニュー・ロマンティックス」の最大の特徴で、またそう名付けられた所以ともなっている。このころロンドンで話題となった「ブリッツ」という若者風俗も実はここに含まれるもので、ニューロマン主義者たちは″フューチュリスト″(未来主義者)など多くの別称でも呼ばれていた。