なぜ大剣と呼ぶの?また、なぜ剣型が多いの?
ファッションについては大概のことは知っているつもりだが、それでもどうしてもわからないことは多い。たとえば「リゾート着はなぜ派手なプリント柄が多いの?」と問われても、リゾートウエアってそんなものでしょ、とか、そうじゃない大人しい無地のリゾート着ってのも結構あるよ、などと答えるしかないのだ。ま、これもファッション・トリビアに関するようなもので、知っておいて損にはならないが、知らなくてもどうでもよいことが多い。ただしフォーマルウエアについての知識、こればかりは知っておいてけっして損にはならない。というよりも知らないと恥をかくことにもなりかねないのだ。何をどう着ようがかまわない自由な着こなしが横行する現代の世の中だが、フォーマルウエアの世界だけはそういうわけにはいかない。
ネクタイを「剣」の形に見立て、その前面に当たる太いほうの剣先を大きな剣であることから「大剣(たいけん)」と呼んだもの。対して裏側の細いほうの剣先は「小剣(しょうけん)」と呼ばれる。ともに日本の業界用語から生まれたもので、英語では大剣を「エプロン」、小剣を「ティップ」などと呼んでいる。なぜ剣型が多いのかというのは、ネクタイそのものの作り方に関係している。ネクタイというのは、生地を「バイアス使い」といって、斜めに裁断して作られるところから、その先端はどうしても90度の角度を伴ったあのような形になるからだ。生地をバイアスに裁断することによって、タテ方向への伸びが確保され、かつ捩(よじ)れを防ぐという効能が発揮されるのである。よくアメリカとイギリスとでは、ストライプの柄が反対に表現されるといわれるが、これはバイアス使いの際の生地の用い方の違いからきているとされる。