「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?

ハンチングとハンティングキャップは違う帽子

ファッション・トリビア蘊蓄学:ハンチングとハンティングキャップは違う帽子

ハンチングというカジュアルな帽子がある。日本では俗に「鳥打帽(とりうちぼう)」と呼ばれ、戦前は商人たちによく用いられていたが、現在ではカジュアルなデザインがほどこされて若い女の子たちの間にも人気を集めている。ハンチングはいうまでもなく英語のハンティング(狩猟)が転訛したもので、これを「狩猟帽」と解してハンティングキャップと同じとする説が多いが、実はこれまったく異なる形の帽子なのだ。ハンチングはご存じのとおり、ベレエ帽に短い前ビサシを付けたような形を特徴としているが、ハンティングキャップは頭にぴったりフィットする丸型の帽子で、それに前ビサシの付くのが特徴。本格的なハンティングキャップはベルベットで作られるというのも大きな特徴となっている。これは本来、英国においてフォックス・ハンティング(狐狩り)のために用いられたところに由来するもので、ここからライディングキャップ(騎乗帽)やジョッキーキャップ(騎手帽)も生まれたのだ。ハンチングはむしろカスケット(仏)といったほうがよい。