ワイシャツの裾ってなぜあんな形になっているの?
ファッションについては大概のことは知っているつもりだが、それでもどうしてもわからないことは多い。たとえば「リゾート着はなぜ派手なプリント柄が多いの?」と問われても、リゾートウエアってそんなものでしょ、とか、そうじゃない大人しい無地のリゾート着ってのも結構あるよ、などと答えるしかないのだ。ま、これもファッション・トリビアに関するようなもので、知っておいて損にはならないが、知らなくてもどうでもよいことが多い。ただしフォーマルウエアについての知識、こればかりは知っておいてけっして損にはならない。というよりも知らないと恥をかくことにもなりかねないのだ。何をどう着ようがかまわない自由な着こなしが横行する現代の世の中だが、フォーマルウエアの世界だけはそういうわけにはいかない。
ワイシャツというのは、いうまでもなく英語のホワイトシャツ(白いシャツ)が日本語に転訛したもの。さらにシャツの語源は古代英語のスキルト scyrte にまでさかのぼることができ、それは「丈の短い服」を意味していた。このスキルトが上下に分かれ、上の部分がシャツに、下の部分がスカートになったというのもよく知られる話だ。時代を経てシャツにネックバンド(衿台)とカフスが付くようになるのが14世紀に入ってからのこと。このころからシャツは、主に男性用の下着としての道をたどるようになるのである。そうワイシャツは元々男の下着だったのだ。とくに19世紀の中ごろまで西洋の男性には日本のフンドシのような下着をはく習慣はなかった。で、どうしたかといえば、シャツの裾を長くし、それで股の部分をくるむようにしていたのである。つまり、シャツは下着のシャツであると同時に下着パンツの役も果たしていたことになる。その名残りがあの形なのである。