ダウンウエアの後ろ裾だけが長いのはなぜ?

服装スタイルの「謎・不思議」: ダウンウエアの後ろ裾だけが長いのはなぜ?

ファッションについては大概のことは知っているつもりだが、それでもどうしてもわからないことは多い。たとえば「リゾート着はなぜ派手なプリント柄が多いの?」と問われても、リゾートウエアってそんなものでしょ、とか、そうじゃない大人しい無地のリゾート着ってのも結構あるよ、などと答えるしかないのだ。ま、これもファッション・トリビアに関するようなもので、知っておいて損にはならないが、知らなくてもどうでもよいことが多い。ただしフォーマルウエアについての知識、こればかりは知っておいてけっして損にはならない。というよりも知らないと恥をかくことにもなりかねないのだ。何をどう着ようがかまわない自由な着こなしが横行する現代の世の中だが、フォーマルウエアの世界だけはそういうわけにはいかない。

ダウンウエアの全部が全部そうなっているわけではないが、たしかにダウンベストなどで、前部に比べて後ろの裾の部分だけが少し長めに作られているものがある。これは「キドニー・ウォーマー」といって、本格的なダウンウエアには必須のデザインなのだ。キドニーとは「腎臓」のことで、つまりは「腎臓を温めるもの」というのがその原意。いうまでもなく腰が冷えないように考えられたもので、いわばその部分にある大事な腎臓をカバーする「腎臓覆い」といった意味を持っている。羽毛を詰めただけでも十分温かいのだが、さらにこうしたデザインを加えるところが、いかにもヘビーデューティーな感じがしていいではないか。これとは別に、本格的なラグビー・ジャージー(ラガーシャツ)などにも、こうした後ろ裾の長いデザインにしたものが見受けられる。これもおそらくは腰部を守るためのアイデアと思われる。そうしたところにこだわるのも、ひとつの見識であろう。