ネクタイにはなぜシルク素材が多いの?

服装スタイルの「謎・不思議」: ネクタイにはなぜシルク素材が多いの?

ファッションについては大概のことは知っているつもりだが、それでもどうしてもわからないことは多い。たとえば「リゾート着はなぜ派手なプリント柄が多いの?」と問われても、リゾートウエアってそんなものでしょ、とか、そうじゃない大人しい無地のリゾート着ってのも結構あるよ、などと答えるしかないのだ。ま、これもファッション・トリビアに関するようなもので、知っておいて損にはならないが、知らなくてもどうでもよいことが多い。ただしフォーマルウエアについての知識、こればかりは知っておいてけっして損にはならない。というよりも知らないと恥をかくことにもなりかねないのだ。何をどう着ようがかまわない自由な着こなしが横行する現代の世の中だが、フォーマルウエアの世界だけはそういうわけにはいかない。

ネクタイそもそもの起源とされる古代ローマ兵士の用いた首巻き「フォーカル」は、リネン(亜麻)で作られた四角い布片であったという。1650年代、ルイ14世に謁見すべくパリに現われたクロアチア兵の首に巻かれていた色鮮やかな布片を気に入って、ルイ14世自らが愛用したのは、白いレースのクラヴァットであった。19世紀初頭ロンドン社交界に君臨したダンディー王ボウ・ブランメルが結び方に工夫を凝らしたのは、麻のネッククロスであった。というように、ネクタイにはさまざまな素材が使われているのだが、現在見るような形に定まった19世紀末以降は、圧倒的にシルクが多く用いられている。これは滑りがよくて結びやすいのと、シルク地の持つ発色性のよさ、多彩な柄表現が可能、加えてシルクの持つ高級感がスーツにはぴったりだったからであろう。しかし、中にはツイードのジャケットに合うような、ウール製の厚手の生地を用いたネクタイも見られるのだ。