服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。
サーファーたちを真似た「サーファーカット」も若者に大流行
「サーファー・ルック」1974
ビーチボーイズの「サーフィンU.S.A」やベンチャーズの「パイプライン」などのヒットからもわかるように、サーフィンそのものは1960年代のアメリカで流行し、若者たちにもてはやされた人気のスポーツだった。1978年に制作された映画『ビッグ・ウエンズデイ』を観ていると、ロングボードを抱えた60年代のサーファーたちが出てきて、なんとも懐かしい気分が生まれてくる。サーフィンが日本で日常化するのは1970年代になってからのことで、それとともにサーファーの服装を真似る「サーファー・ルック」が誕生した。サーファーたちの髪型を真似た「サーファーカット」(段カットの一種)が若者たちの間に流行り、男の子はアロハシャツの裾をコーデュロイやホップサックのパンツの中に入れる着こなしで街を歩いたものだった。これは雑誌『ポパイ』が教えた着方だったが、70年代の後半はこうした「陸(おか)サーファー」と呼ばれる連中が跋扈していたのだ。