日本のファッション用語には海外でまったく通じないものが沢山ある。たわむれに抽出したところ、それは400語ほどにも達した。その中から和製英語に属するものを中心に200語あまりを抜粋。今回ここに紹介するのはそこから厳選した用語の類で、その多くはすでに一般化しているから、国内で使用する限りはまったく問題ないのだが、いざ海外でという時に困ることが多い。日本だけのおかしなファッション用語というのも、これはこれで面白いのだが・・・・・。

ピー・コート

海外でまったく通用しないファッション用語:ピー・コート

ピー・コート
pea coat

正しくは
【ピー・ジャケット】
pea jacket その他

イギリス海軍の艦上用ユニフォームとして採用されてから流行するようになったショート・コートの一種。左右どちらにも合わせることのできる前合わせ(ツーウエイ・ダブル・ブレステッド)と、タテ型に仕切られたマフ・ポケットをデザイン上の大きな特徴とし、ネイビー・ブルーのメルトン地で作られるのが本格とされる。別称、異称が多いが、英米ではピー・ジャケットと呼ばれるほうが一般的だ。

日本ではピー・コートはピー・コートとだけ呼ばれるが、外国では驚くほど多くの名称がある。ピー・ジャケット、リーファー・ジャケット、パイロット・ジャケットあるいはパイロット・コート、ウォッチ・コート、ブリッジ・コート等々。なかで、英米でもっとも使用頻度の高いのはピー・ジャケットといういい方である。ピー・ジャケットというのは、ピー・コートのもっとも初期の総称で、オランダ語のピイエッケルpijjekkerをそのまま英語に置き換えたもの。この言葉は、なんと1720年代に生まれている。ピーというのは本来オランダ語で、粗い紡毛地をいう。これで作られたジャケットだから、ピー・ジャケットと称したのだ。ピーは英語ではあくまでもpeaであって、これをPコートと書くのは誤りということにも気づいてもらいたい。では、他の名称についても若干の説明をしておこう。リーファーは帆を巻き上げるという意味から「海軍少尉候補生」、パイロットはパイロット・クロスという生地の名前、ウォッチは「見張り」、ブリッジは「艦橋」という意味である。いずれも海軍や船に関係しており、これらはみな現地でも通用する。