男子專科 2014 AUTUMN vol.2

男子專科 2014 AUTUMN vol.2

SPENCER HART:揺サヴィル・ロウのクール・キングは今、パームスプリングスに夢中だ・・・1

男子專科 2014 AUTUMN vol.2 より

ニック・ハートが迎えてくれたのは、サヴィル・ロウの店ではなく、クラリッジズの目の前にある大型旗艦店。クラリッジズといえば、世界的な金持ちとロックミュージシャンが同じロビーで寛げる最高のホテル。ベッドシーツの心地良さも特筆ものだ。そんなダンディご用達ホテルの前だから、店舗として最高のロケーション。しかしニックに聞いてみるとホテルのセレブ客のことなどまったく考えていなかったようだ。

「1階のファサードに使われている、この大きな窓を見てください。古い銀行を改築したものなんだけれど、1940年代のパームスプリングスにある建物みたいでしょう。3年間掛かってここを見つけたのです」

パームスプリングスだって? 疑問を感じながら店に入ると、メインの白壁にはハリウッドのフォーティーズルックを彷彿させるような、ラペル幅の広いジャケットがかかっている。日本で10年ほど前に見たスペンサー・ハートとはイメージが違う。呆気にとられていると、ニックは白い壁にカードを差し込み番号を入力。すると隠し扉がスーッと開いた。007映画に登場するスペクターの秘密アジトみたいなアプローチ。階下は昔の大型金庫室で、そこがVIP専用のビスポーク・ラウンジになっていた。「ナローラペルのスーツはメディアが注目してくれたおかげでイメージが世界に広がり、スペンサー・ハートらしさとして定着しました。でもワイドラペルの服も、僕のなかにあるクールな要素のひとつです」

・・・【英国スペシャル・遠山周平の仕立て屋を巡る冒険:SPENCER HART】次回更新に続く