HUNTSMAN:ビスポークを死守しながら老舗のブランド力を最大限に生かす・・・1
約束の時間より少し前に着いたので店内を見学させてもらった。ハンツマンは、かってサヴィル・ロウでもっとも高価な注文服を売る老舗であった。同時に、ここは進取の気質にも富んでいたのである。1981年、ハンツマンはサヴィル・ロウで最初にレディ トウ ウエアの販売を始めた店となった。
その伝統は今も継続されているという。探してみると店の右側に既製服が整然と並んでいた。ダークブルーのサージ、チャコールグレーのサキソニー、ごく普通のストライプのグレーとブルー。
デザインは、ハンツマンのハウススタイルであるシングル胸の1個ボタン、サイドベンツのみ。構築的な肩線、背筋がスーッと伸びて見える男らしいラインはそのままだが、以前のモノよりスマートに見える。何というか、かしこまった堅さが消えているのだ。
これは筆者の好みである。種類は少ないが、どれも素晴らしい完成度。仮にこのうちの1着があれば、普通の男性ならほとんどの用事は賄えるはずだ。価格は約2000ポンド。ロンドンの下手な仕立て屋で大枚をはたくより、これを買って、ハンツマンの職人に完璧にお直ししてもらったほうが断然お得であろう。そう考えていたらクリエイティブ・ディレクター兼オーナーのルビー・ル・ルビーに階上へ呼ばれた。
・・・【英国スペシャル・遠山周平の仕立て屋を巡る冒険:HUNTSMAN】次回更新に続く