日本のファッション用語には海外でまったく通じないものが沢山ある。たわむれに抽出したところ、それは400語ほどにも達した。その中から和製英語に属するものを中心に200語あまりを抜粋。今回ここに紹介するのはそこから厳選した用語の類で、その多くはすでに一般化しているから、国内で使用する限りはまったく問題ないのだが、いざ海外でという時に困ることが多い。日本だけのおかしなファッション用語というのも、これはこれで面白いのだが・・・・・。

パタンナー

海外でまったく通用しないファッション用語:パタンナー

パタンナー
patterner

正しくは
【パターンメーカー】
patternmaker(米)
【パターン・カッター】
pattern cutter(英)

デザイナーが描いたデザイン画に基づいてパターン(型紙)をつくる人。服作りにおいては縁の下の力持ち的な存在ではあるが、パタンナーがいなくては服はできない。またパターンのサイズ展開を行うグレーダー graderという仕事もパタンナーの一種。ただし、パタンナーという呼称は日本独特のものであって、英語、とくにアメリカではパターンメーカーといい、業界ではPMと略すこともある。イギリスではパターン・カッターということが多い。

日本人が勝手につくった、いわゆる和製英語のなかで、もっともすぐれたものをひとつ挙げよといわれたら、私は迷わずナイターという言葉を挙げる。本当の英語ではナイト・ゲーム nightgameというところを、ナイター nighterというのは素晴らしい発想ではないか。パタンナーというのも、実はこれに似ている。パターンを起こす人という意味で、本当はパターン・メーカーといわなければならないところをパタンナー。海外ではけっして通じない表現ではあるけれど、これほど英語らしい日本語(?)もないのではなかろうか。このパタンナーという、日本のファッション業界ではすっかり定着した言葉をアメリカではパターンメーカーというが、繊研新聞社発行の「産地直送!いきいきファッション英語」という本によると、イギリスではパターン・カッターというらしい。カッターというと、我々日本のファッション関係者は、生地をカットする裁断師を思い浮かべるが、国が変われば用語も変わってしまうのだろう。ちなみに、フランスのオートクチュールの世界では、パタンナーのことをパトロニエ patronnerという。これも覚えておいて、損はしないだろう。