サヴィル・ロウに妖精の粉をふりかけたスウィンギン60’Sのピーターパン(5)
サヴィル・ロウのピーターパン登場
いっぽうトミー・ナッターはテーラー&カッターアカデミーで学んだものの、ワードの店ではセールスマンとして雇われていた。こう書くと軽い職業に思われがちだが、仕立て業におけるセールスマンの役割は重要で、店の売り上げの多くは彼らの双肩にかかっているといっても過言ではない。新たな顧客を見つけたら、その客がどんなカッターと相性が合うかを見極めるのもセールスマンの役割。また自分がいる仕立て屋がいかに素晴らしい服を作るかを、身をもって顧客に示すことも重要な任務である。
ハーディ・エイミスがその著書『ハーディ・エイミスのイギリスの紳士服』(大修館書店)で紹介しているように、トミー・ナッターはハンサムなうえに体格も立派だった。くびれたウエストと広い肩幅を持ち、彼はビスポークスーツを格好良く着る歩くお手本であったのだ。しかも話術が巧みで、人を引きつける才能もあった。
・・・次回更新に続く