男ならまずほとんどが、スーツを着る。ジャケットを着る。そのとき必ずあらわれるのが逆三角形の小さなスペース、すなわちVゾーンである。そして、背広が男の顔たりえるのは、このVゾーンこそ、男のファッション哲学をはっきりと示した看板だからだ。Vゾーンに強くなければ、お洒落な男になれても、男のお洒落れを極めることは不可能だ。

dansen 男子専科 December 1988

dansen 男子専科 December 1988 より

男はVに強くなれ:無理のない組合わせをシックにまとめる

男はVに強くなれ:無理のない組合わせをシックにまとめる

THE V ZONE 季節の味をVゾーンで

黒いスーツは絶対安全市民服とばかりに年中これだけで押し通している男性がいる。それは、着たきりスズメの黒背広。おしゃれ以前のファッション不感性症候群の、かなり重度な患者たちである。最近のメンズのおしゃれは、ビジネス用途のワードローブにも適切な季節感を、というのが重要なポイントになってきているからなのだ。

このおしゃれの極意クラスのルックづくりに一番重要なのが、季節的Vゾーン構成法になる。夏の熱い季節にぴったりの淡色系のリネンのネクタイ、落ち葉がちらちらする季節にならなければどうもしっくりと味が出てこないウールのネクタイなど、その最たるもの。こうした表現をもっと陰影に富んだ味わいであらわすのが、色彩の寒色と暖色系の使い分けになってくる。

この感覚をネクタイだけにとどめるのは、いかにも惜しい。狙いはVゾーン全体に季節感をたっぷりと拡張してみること。秋から冬にかけては、シャツをウールまたはウール調のものにして、スーツを紡毛系の生地のものにすれば、ぴったりと決まるだろう。タイだけではなく、Vゾーンを構成するさまざまなアイテムのそれぞれの特性の理解がおしゃれの最初にして究極のポイントという事実を無視するわけにはいかない。Vゾーンを立体的に考えるということである。