CINE PREVIEW:ナインハーフ

男子專科 1986年6月号 NO.267 より

ナインハーフ

しっとりした雨上がりのニューヨークを背景に見る者をとろけさす、文句なしにセクシーな作品。

”セクシーな”と表現されるのは、なにも女性に限られたことだけではない。男が見てさえ”セクシーな男”はずいぶんといる。マーロン・ブランドやエルビス・プレスリー、ちょっと前ならリチヤード・ギアなどは、そのセックス・アピールを売りモノとしていたほどだ。それでは”今”いちばんセクシーな男性俳優は誰だろう。私ならば文句なくミッキー・ロークの名を挙げたい。

日本では『白いドレスの女』や『ランブルフィッシュ』『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』といった映画でしか注目されていない彼だが本国アメリカではその愁いを秘めた抑制された演技が絶賛を浴び、82年の『ダイナー』では全米映画批評家協会の助演男優賞さえ受賞している本格的演技派俳優だ。彼の魅力はなんといってもその目。優しそうでありながらどこかに悲しみの色が漂う。この目で見つめられたなら、女でなくても変な気分になってしまうほどの、不思議なムードを持っているのだ。

そんなミッキー・ロークの魅力のすべてを見せてくれたのがこの作品。大都会ニューヨークの街角で知り合った一組の男女の、9週半に及ぶ愛の姿を描いたラブ・ストーリーだ。