「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?

ウインザー・ノットを考案したのはウインザー公ではない

ファッション・トリビア蘊蓄学:ウインザー・ノットを考案したのはウインザー公ではない

ウインザー公といえば、シンプソン夫人との世紀の恋で王位を捨てた英国王エドワード8世の退位後の呼び名。しかしファッションに少しでも関心のある人には、皇太子時代からのメンズウエアの偉大なる革新者、また時代をリードした20世紀最大のベストドレッサーとしてこよなく知られる。そんな公の名を冠したファッションアイテムには、ウインザー・カラー(ドレスシャツに見るワイドスプレッドカラーのこと)と並んでウインザー・ノット(ネクタイの太結び)というのがあり、いずれも公が考案したものとされているが、ことウインザー・ノットについては公の関するところではないという。ノット(結び目)が大きく表現されるこのあしらい方は、ウインザー公が皇太子時代から好むところではあったが、ウインザー・ノットという名称がつけられたのは1947年のアメリカでのこと。1960年に発行されたウインザー公の自伝ともいえる『A FAMILY ALBUM』という書物の中で、公はそれについて「私は何ら関与、責任を持つものではない」と書き遺している。