「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?
学ランの「ラン」はオランダの意味
あの日本独特の詰衿学生服のことを俗語で「学ラン」というが、これはどこからその名が付いたものか?調べてみると、かつて舶来生地のことを「ランダ」と呼んだ時代があり、それはオランダを約めた言葉であったという。つまり、オランダから渡ってきた生地ということで「ランダ」となり、さらに短くして「ラン」。これを学生服に結びつけて「学ラン」という言葉が発生したのだ。徳川幕府が鎖国制度をしいて、外国との窓口を長崎出島のオランダ屋敷のみとしたのは1641(寛永18)年からのことだから、「ランダ」という言葉もおそらくはそれ以降に生まれたものと思われる。それまでの外来語はほとんどがポルトガルとスペインからもたらされたもので、たとえばウールの生地をいう「羅紗(らしゃ)」という言葉は、ポルトガル語のRAXAからきたものだし、「合羽(かっぱ)」はスペイン語のCAPA(カパ)からきている。英語が主となるのは幕末から明治にかけてのことで、それまで日本人にとっての外国語とは、オランダ語のことに他ならなかったのだ。