「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?

女性のミュールは赤い色の魚の名

ファッション・トリビア蘊蓄学:女性のミュールは赤い色の魚の名

女性のミュールだが、あれは元々は中世のヴェネツィアで用いられた上草履(うわぞうり)風の履き物であった。これが当時大流行し、赤い色であったところから「赤い色の魚」の名をとって「ミュール」と名付けられたのである。その後、ミュールは舞踏靴など上等の靴をはいて外出する時のオーバーシューズとして用いられ、フランスなどでは高級靴の付属品として売られていたものだった。これをスリッパーといっていたのはエリザベス1世時代の英国で、英国でもミュールは好んで用いられていたのだ。17世紀末ごろから靴にヒールが付くようになり、ミュールもその形を変えてゆくが、やがて寝室などの室内履きとして定着を見るようになる。日本でこれがファッションとして注目されるようになったのは1970年代末ごろからのこと。しばらく姿を消していたが、1990年代半ばに至って息を吹き返し、ご存知ペタペタ歩きの女たちを増殖させるようになったのである。