「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?

カーディガンというのは人の名前である

ファッション・トリビア蘊蓄学:カーディガンというのは人の名前である

セーターとひと口にいっても数々あって、代表的なのがプルオーバーとカーディガン。プルオーバーは頭から引っ被るようにして着るものだから分かるとして、じゃあカーディガンとはどこからきたのか? 実はカーディガンというのは人の名前であって、そのフルネームをジェームズ・トーマス・ブラデネルという。つまりはカーディガン伯爵7世(1797~1868)のことである。カーディガン伯爵はクリミア戦争(1853~56)で有名になった英国陸軍の将軍(軽騎旅団長を務めた)で、彼が戦場でこよなく愛用した毛糸製のジャケットが元になって後に「カーディガン」と呼ばれるようになったのだ。英国スタイルのクラシックなカーディガンは、前立ての付いたハイボタン型のものが一般的だから、将軍が着用していたのも今に見るような前がVの字型に大きく開いたデザインではなく、おそらくは首元が詰まったかっちりとした形のものであったろうと思われる。ちなみにこのクリミア戦争からは、英国陸軍のラグラン将軍が負傷兵たちのために考案したとされる「ラグラン・スリーブ」という袖のデザインも生まれている。