日本のファッション用語には海外でまったく通じないものが沢山ある。たわむれに抽出したところ、それは400語ほどにも達した。その中から和製英語に属するものを中心に200語あまりを抜粋。今回ここに紹介するのはそこから厳選した用語の類で、その多くはすでに一般化しているから、国内で使用する限りはまったく問題ないのだが、いざ海外でという時に困ることが多い。日本だけのおかしなファッション用語というのも、これはこれで面白いのだが・・・・・。

タキシード

海外でまったく通用しないファッション用語:タキシード

タキシード
tuxedo

正しくは
【タクシィードゥ】
tuxedo(米)
または
【ディナー・ジャケット】
dinner jacket(英)

夜間の半礼装(準礼装)として用いる男のフォーマル・ウエア。黒またはミッドナイト・ブルーと呼ばれる濃紺のドレッシーな生地で作られたスーツ形式の服で、多くはシングル前1個ボタン、拝絹襟付きの上着と、側章を1本付けたズボンで構成される。黒の蝶ネクタイとカマーバンド(腹帯)も必須のアクセサリーで、全体を黒と白で統一するのが着装の原則とされる。タキシードというのはアメリカでの呼称で、イギリスではディナー・ジャケットという。

海外旅行へ出かけた人で、旅行業者のこんな説明に困った人はいないだろうか。「当地ではパーティーがありますので、タキシードかディナー・ジャケットをお持ちください」さて、タキシードとディナー・ジャケットとは違うものなのだろうか?これは旅行業者のまったくの無知によるもので、両者は同じ服装を意味しているのである。ただ、アメリカではタキシードと呼ぶのに対し、イギリスではディナー・ジャケットというだけの話。フランスやドイツではスモーキングsmoking(フランス語の発音ではスモッキニュ)というが、国によってこれほど名称の変わる服も珍しい。ディナー(晩餐)の時に用いるからディナー・ジャケット、食後のゆったりした喫煙時に用いたからスモーキング、といういわれはすぐわかるとして、タキシードというのはなぜか?これは、アメリカ、ニューヨーク州のタキシード・パークにあるカントリー・クラブのユニフォームに因んでいるからだ。だから、これはちょっとキザだが、現地風にタクシィードゥと発音しなければ絶対に通じない。困った時には、これの短縮形であるタックス、あるいは世界共通語であるブラック・タイといえばよい。