服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。
不良少年たちのシンボルとして、時代を駆け抜けた
「マンボ・スタイル」1952~1957
キューバ生まれのペレス・プラードが1943年に創案したとされるラテン音楽「マンボ」が、日本で流行するようになったのは1952(昭和27)年ころからのこと。当時人気のあったダンスホールはマンボを踊る若者たちでいっぱいになり、ここから「マンボ族」と呼ばれる若者集団が誕生した。彼らのパンツは脚にぴったりフィットしたきわめて細身のもので、これを「マンボズボン」と呼んだ。上着は極端に肩幅が広く、丈も長めのビッグジャケットで、これにアーチドカラーという弓型の衿を特徴としたシャツを合わせ、ストリングタイやごく細身のネクタイをあしらう。これを「マンボ・スタイル」と呼んだものだが、実はこれ、マンボを演奏するバンドマンたちのステージ衣装を真似たものであったのだ。マンボはさらに発展し55~56年にかけてピークに達するが、マンボズボンは形を変えながらも不良少年たちのシンボルとして、50年代という時代を駆け抜けた。