昨日と今日の男の博物誌:ウッディ・アレン

男子專科 1986年7月号 NO.268 より

ウッディ・アレン(アメリカ:俳優・監督・作家:1935~)-8

高卒だって?30年遅いね。

アレンはカリフォルニア落ち(?)をする破目に陥ることもなく、マンハッタンのこぢんまりとしたペントハウスに住んで、好きな仕事をつづけました。映画製作にかかっていないときには、毎日朝6時に起きてクラリネットを吹き、テニスを愉しむ。あとは、終日机に向かってシナリオを書いたり、短編小説を書いている。で、それから、親しい友人たちちが待っている。『エレインズ』(イースト・サイドにある有名レストラン)へ遅い夕食をとるために出かけてゆく。

これが、アレン式おいしい生活(前に西武百貨店の広告に登場したときのコピーでしたね)の基本パターンなのだそうです。こうした変哲もないシンプル・ライフのなかから、アカデミー作品賞・監督賞・脚本賞をとった『アニー・ホール』や『インテリア』、『マンハッタン』といった傑作、ヒット作が作られてきた。目下公開中の最新監督作品『カイロの紫のバラ』でもハッとするアイディアの冴えを見せてアレン・ファンを喜ばせています。

この新作でも、アレンと生活をともにしているミア・ファローがあざやかな演技を見せていますが、かつてのダイアン・キートンといい、このファローといい、花も実もあるいいオンナをころりとまいらせてしまう秘密はどこに隠されているのでしょうか。アレンのよれよれのジャケットは、よく見ると、何年か前に映画のなかで着ていたものと同じものだというこだわりのなさ。そんな純なクセも、才人アレンをいっそう愉快に見せていることは確かなようです。

・・・了