男子專科 1986年7月号 NO.268 より
オーソン・ウエルズ(アメリカ:映画作家&俳優:1915~1985)-3
頂上から始めるのはつらいものさ。
この1時間ドラマの最後には、次のような演出者自身による、言葉が用意されていたのですが、そこまでゆきつく前にひとびとは恐怖に駆られて平静さを失なってしまったというわけなのでした。
「みなさん、オーソン・ウエルズです。・・・この『宇宙戦争』が日曜日の贈り物として意図された以上のものではないことを、はっきりさせておきたいと存じます。マーキュリー放送劇場はこの番組で、シーツをかぶってやぶから出てきて、バアと申したかっただけであります」(H・キャントリル『火星からの侵人』斎藤耕二・菊池章夫訳)
このエピローグをしゃべった23歳(!)のドラマ・ディレクターは、前代未聞のパニック・ドラマをあっさりと作りあげてみせた怪物児として名を上げます。むろん、異色の才能を虎視眈々とねらっているハリウッドのやり手たちが見逃がすわけがない。
さっそく、『宇宙戦争』の仕掛け人は映画の世界に迎えられる。そこでこのワンダー・ボーイは最初のフィルムづくりに全精力を注ぎこみ、共同脚本・監督・主演という3役をこなして『市民ケーン』を作りあげます。
・・・次回更新に続く