男子專科 1986年7月号 NO.268 より
オーソン・ウエルズ(アメリカ:映画作家&俳優:1915~1985)-7
頂上から始めるのはつらいものさ。
『市民ケーン』のシナリオは、ウエルズとベテラン・シナリオライターのハーマン・J・マンキウィッツの共同作業の結果であり、すべてのアイデアが神童の頭脳から生まれたわけではないということがしだいに分かってきたからです。
マンキウィッツは、ブロードウェイのコメディやマルクス・ブラザーズのコミック映画のシナリオを書いていた元新聞記者の経歴をもつ優秀な書き手でした。『市民ケーン』では、主人公のケーンが死の床でつぶやく「ローズバッド(バラのつぼみ)」という謎のひと言を追って回想の物語が展開してゆくという構成がとられている。このひと言によって新聞王の物語は極めてサスペンスフルなスタートを切るわけですが、「ローズバッド」というこのアイデアを考えだしたのは、マンキウイッッのほうだったそうです。
・・・次回更新に続く