「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?

シルエットは人の名前から生まれた

ファッション・トリビア蘊蓄学:シルエットは人の名前から生まれた

シルエットはいまさら説明するまでもなく「影絵、影法師」のことで、ファッションでは服などの立体を平面化したところに生まれる輪郭をこう呼んでいる。元々は「黒く塗られた横顔の画像」をいい、フランス語のSILHOUETTEという綴りが英語でもそのまま用いられている。と、ここまでは何の問題もないのだが、これが実は人の名前から生まれた言葉だというと、少なからず驚かれるのではないだろうか。そう、シルエットというのは18世紀フランス、ルイ15世時代の財務総監を務めたエチエンヌ・ド・シルエット(1709~67)の名前からきているのだ。彼が財務総監に任命された1759年当時、フランスは大変な財政困難に陥っており、その窮状を打開すべく登用されたのが切れ者エチエンヌ・ド・シルエットだったというわけ。その打開策のひとつに「肖像画は絵ではなく影絵でなければならない」というのがあり、ここから黒く塗りつぶした半面影像をシルエットと呼ぶようになったのである。