「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?
エチケットとは本来「立て札」の意味
フランス・ブルボン王朝の壮大なる遺産「ヴェルサイユ宮殿」には、長い間トイレがなかったことをご存じだろうか。いや、あるにはあったらしいが、その数はとても少なく、夜毎繰り広げられる舞踏会に集まった紳士、淑女たちは、夜陰にまぎれて庭園の片隅でそっと用を足したといわれている。その臭い消しのために香水が発達したというのも有名な話だが、とにかく貴顕たちのマナーの悪さには相当なものがあったようだ。それを見かねたスコットランドから来た庭師が、庭園のあちらこちらに立て札を立て注意を促した。この立て札をフランス語で「エチケット」といい、ここからエチケットが「礼儀」の意味で用いられるようになったのだ。エチケットは元々正札や荷札などの「ふだ」の意で、英語のチケットと同じ。他に宮廷訪問者の行動を指示する「通用札」を示し、ここから宮廷儀礼をエチケットといったところから、一般に礼儀作法のことを意味するようになったという説もある。いずれもルイ14世(在位1643~1715)時代の話である。