日本のファッション用語には海外でまったく通じないものが沢山ある。たわむれに抽出したところ、それは400語ほどにも達した。その中から和製英語に属するものを中心に200語あまりを抜粋。今回ここに紹介するのはそこから厳選した用語の類で、その多くはすでに一般化しているから、国内で使用する限りはまったく問題ないのだが、いざ海外でという時に困ることが多い。日本だけのおかしなファッション用語というのも、これはこれで面白いのだが・・・・・。

ワイシャツ

海外でまったく通用しないファッション用語:ワイシャツ

ワイシャツ
white shirt

正しくは
【ドレス・シャツ】
dress shirt

スーツや背広型のジャケットの内着として、ネクタイを結んで着用するドレッシーな表情の男子用シャツ。Yシャツと表記されることもあるが、これらはまったく日本的なまちがいで、英米ではドレス・シャツをいちばんとして、ビジネス・シャツとか単にシャツで通じる。由来に忠実にいうならば、ホワイト・シャツというのがより正しいのだろうが、現在のそれらには色ものや柄ものもあり、英語でホワイト・シャツといってしまうと、必ずしも適切ではなくなってしまう。

ワイシャツとは、英語のホワイト・シャツwhite shirtが訛ったもので、1872年(明治5)ころから一般化したといわれる。当時のワイシャツは、麻か綿で作られた真っ白なシャツで、幕末から明治時代の初期にかけて、これをはじめて目にした日本人は、外国人のいう「ホワイト・シャート」という発音が、どうしても聞き取れなかったのであろう。そうしてホワイトシャーツがワイシャツに転訛してしまった。以来、ワイシャツという言葉はすっかり日本語として定着してしまったが、さて、これは外国ではなんといったらいいのだろう?SHIRT(シャートと発音)だけでOKだと、外国通はいうけれど、アメリカでは一般にドレス・シャツといい、これには礼装用のフォーマル・シャツも含んでいる。それを含まないときはビジネス・シャツでもよいという。しかし、イギリスではドレス・シャツというと、礼装用のものだけをさすようで、ワイシャツに該当するものは単にシャツというだけで通じる。ネクタイを必要としないシャツは、イギリスではカジュアル・シャツと総称されるのである。ところ変われば名が変わるで、言葉というものは本当におもしろい。