服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。

新しいスタイルを再発見しようというファッション・スタイル

年代別『流行ファッション』物語:新しいスタイルを再発見しようというファッション・スタイル

「ニューウエーブ・ファッション」1980

70年代末期のパンク以降の若者たちの動きを「ニューウエーブ」と総称する。元は1978年頃イギリスのロック音楽専門誌が、パンク・ロックの衰退に伴って新しく興ってきたロック音楽の状況を「ニューウエーブ」と名付けたのが最初とされるが、それはやがてこのころの若者ファッションの代名詞としても用いられるようになった。かつて50年代の終わりから60年代の初めにかけて、フランスの映画界に「ヌーベル・バーグ」という動きが生まれたことがあるが、「ニューウエーブ」はその英語版でもあり、ともに「新しい波」という意味を持っている。ニューウエーブといっても、これは当時の若者文化の新しい価値観をひっくるめていったものだから、特定のニューウエーブ・スタイルといったものがあるわけではない。新しいスタイルを求めながらも、一方で過去を探り、その中から現代に通じるものを再発見しようというのが、このファッションの特徴でもあったのだ。