「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?

ブルックス・ブラザーズ社で「ポロカラー」といえばボタンダウンのこと

ファッション・トリビア蘊蓄学:ブルックス・ブラザーズ社で「ポロカラー」といえばボタンダウンのこと

衿の先端を小さなボタンで留めるシャツ衿の形を「ボタンダウン・カラー」といい、これはアメリカン・トラディショナル・スタイルに特有のデザインとして知られる。アイビーリーグ校を卒業したアメリカのエリートたちが「ボタンダウン・マン」と呼ばれるのも、このデザインがいかに伝統的なものであるかを示しているようで興味深い。ところでこの形を最初に作ったのは、アメリカのトラディショナル・ファッションの老舗「ブルックス・ブラザーズ」社とされる。同社のオーナーであるジョン・ブルックスが英国でポロ競技を観戦した際、選手たちが跳ね上がる衿を押さえるために衿先をボタン留めしているのにヒントを得てデザインしたのがボタンダウン・カラー・シャツの始まりなのだ(1896年)。ためにブルックス・ブラザーズ社ではこれを「ポロカラー」と呼んで定番化しているのである。日本ではポロシャツ型の衿のことをそう呼んでいるので、ちょっとびっくりする。