昨日と今日の男の博物誌:サム・シェパード 男子專科 1986年2月号 NO.263

男子專科 1986年2月号 NO.263 より

サム・シェパード(アメリカ:劇作家・俳優:1943~)-6

天才?不満足が少し深いだけさ。

「ぼくは、演劇についてはほとんどなにも知らなかった」とのちにシェパードは語っています。当時、サム・ロジャーズ一家はサウス・パサデナよりひと回り小さいデュアルテという田舎町のアボカド農園に住んでいました。

「自分の環境を抜けだすひとつの手段としてぼくは演じていたものだ。デュアルテでは、スーパー・マーケットに行くことのほかは誰もなにもしていなかったからね」

そんなある日。新聞を見ていたスティーブの目にある劇団のオーディション予告が飛びこんできます。さっそく応募のために出かけて行った若者が新しい劇団員として選ばれたのは当然のことでした。

6フィート1インチ(約185センチ)の長身に精桿な肩。怒り気昧に張りだした頬骨。頑健そうな口から出てくるゆったりとしたアメリカ南西部特有の喋り。そしてなによりも名状しがたい鋭さと情感をたたえた目が審査員たちの目にとまらなかったはずはありません。

ビショップズ・カンパニー・レパートリー・プレイズという名称の通り教会関係の機関で運営している劇団だったようです。ともあれ、スティーブ・ロジャーズという名前でその劇団に採用されたカントリー・ボーイは、さっそくフィラデルフィアに送られて以後8カ月間にわたる公演に参加します。

プログラムはといえば、「熊のプーさん」からシリアス・ドラマまでごった煮めいたにぎやかさでした。だが、はじめて体験したこのドラマ漬けの毎日は、青年スティーブのクリエイティブ魂を目覚めさせるのに十分だったようです。

・・・次回更新に続く