「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?

ブラックスーツは日本人が発明した

ファッション・トリビア蘊蓄学:ブラックスーツは日本人が発明した

俗に「略礼服」として知られるブラックスーツ、つまり黒の礼服地で作られた上下服のことだが、これは日本人の発明による。まだ物資の欠乏していた昭和20年代の後半、フォーマルウエアメーカーの草分けである渡喜株式会社(現・株式会社カインドウェア)の社長、渡辺国雄氏が考案したというのが本当なのだ。これ1着あれば、ネクタイを変えるだけで冠婚葬祭いずれにも着用できる大変便利な礼服ということで、一般に普及を見たのである。すなわちシルバータイと呼ばれる白無地のネクタイを着ければ結婚式に、黒無地のネクタイにすれば葬式にというように。このような考え方が日本人の間ではすっかり定着して、結婚式における異様な黒服集団を作り出してしまったわけだが、これが海外で通用するとはけっして限らない。日本ではすでに常識とされているから無理に否定はしないが、海外のそうした場(とくにパーティー)での着用には十分に気をつけなければ失笑を買うことにもなりかねないので、ひとつご注意を願いたい。