ファッションについては大概のことは知っているつもりだが、それでもどうしてもわからないことは多い。たとえば「リゾート着はなぜ派手なプリント柄が多いの?」と問われても、リゾートウエアってそんなものでしょ、とか、そうじゃない大人しい無地のリゾート着ってのも結構あるよ、などと答えるしかないのだ。ま、これもファッション・トリビアに関するようなもので、知っておいて損にはならないが、知らなくてもどうでもよいことが多い。ただしフォーマルウエアについての知識、こればかりは知っておいてけっして損にはならない。というよりも知らないと恥をかくことにもなりかねないのだ。何をどう着ようがかまわない自由な着こなしが横行する現代の世の中だが、フォーマルウエアの世界だけはそういうわけにはいかない。
チェンジポケットの発案者は誰?
チェンジとは「釣り銭、小銭」の意で、それを収納するポケットを「チェンジポケット」と呼ぶ。これはまた「チケットポケット」とも呼ばれるが、チケットとは「切符」のことで、とくに鉄道用の切符を入れておくポケットをさす。両者は同義とされるが、より正確にいうならばちょっとした違いも発見できる。すなわち、チェンジポケットはふつうジャケットの右側の脇ポケットの内側に併設された小さな袋状のものを指し、文字通り、小銭を仕舞ったり取り出したりするのに役に立つ。これはまたパンツの右脇ポケットの内側に設けられる例もある。これらは当然外側から見ることはできない。対してチケットポケットはジャケットやコートの右脇ポケットの上部に付く小さなフラップポケットを指すことが多い。これを「切符隠し」というが、これは英国の服に特有のデザインで、旅行用のコートに1859年ごろから使用され、1890年代には背広上着にも見られるようになった。これをアメリカや日本ではチェンジポケットとも呼んでいるのだが、発案者が英国人であることははっきりしているが、どこの誰かということまでは、さあ、よく分からない。