ファッションについては大概のことは知っているつもりだが、それでもどうしてもわからないことは多い。たとえば「リゾート着はなぜ派手なプリント柄が多いの?」と問われても、リゾートウエアってそんなものでしょ、とか、そうじゃない大人しい無地のリゾート着ってのも結構あるよ、などと答えるしかないのだ。ま、これもファッション・トリビアに関するようなもので、知っておいて損にはならないが、知らなくてもどうでもよいことが多い。ただしフォーマルウエアについての知識、こればかりは知っておいてけっして損にはならない。というよりも知らないと恥をかくことにもなりかねないのだ。何をどう着ようがかまわない自由な着こなしが横行する現代の世の中だが、フォーマルウエアの世界だけはそういうわけにはいかない。

スーツに見られるお台場って何?

服装スタイルの「謎・不思議」: スーツに見られるお台場って何?

お持ちのスーツの上着の内側をちょっとご覧になってほしい。とくに見返しの生地と内ポケットの関係を。見返しの生地の一部が延びて、内ポケットのポケット口をおおっているような感じになっていたら、これが「お台場仕立て」と呼ばれる服の作り方である。これは高級仕立ての象徴といわれ、昔は注文服にしか見られない手法だったが、今では高級感を出すために既製服のスーツにも採り入れる傾向が目立っている。「お台場」というのは東京湾の出入り口にあるあの「お台場」のことで、その形が似ているところからの命名といわれているが、誰が付けたのかは分かっていない。なぜこのような形になったのか、ということについても諸説紛々だが、一説には裏地を取り替える時に、わざわざポケットを作り直す手間が省けるからなどとされている。この他、袖口が「本切羽(ほんせっぱ)」=本開きになっているか、ボタン付けが手縫いかなど、本物を判断するポイントは多い。