ファッションについては大概のことは知っているつもりだが、それでもどうしてもわからないことは多い。たとえば「リゾート着はなぜ派手なプリント柄が多いの?」と問われても、リゾートウエアってそんなものでしょ、とか、そうじゃない大人しい無地のリゾート着ってのも結構あるよ、などと答えるしかないのだ。ま、これもファッション・トリビアに関するようなもので、知っておいて損にはならないが、知らなくてもどうでもよいことが多い。ただしフォーマルウエアについての知識、こればかりは知っておいてけっして損にはならない。というよりも知らないと恥をかくことにもなりかねないのだ。何をどう着ようがかまわない自由な着こなしが横行する現代の世の中だが、フォーマルウエアの世界だけはそういうわけにはいかない。
最近のイタリア・スーツに見る袖のシワは?
女の人の目から見ると、男のスーツなんて何十年も変わっていないように見えるかもしれないけれど、どっこい、男のスーツだって大変な進化を遂げているのだ。その目的はいかにカッコよく、いかに着やすい形に仕上げていくかという点にある。それを徹底的に追求しているのが、最近のイタリアのスーツで、その最高級ラインは「クラシコ・イタリア」と呼ばれている。中でもナポリ仕立てのそれは、随所にアイデアが光っている。たとえば袖付け部分にできるシワ、これはイタリア語で「マニカ・カミーチャ」(シャツ袖の意)といい、日本では「雨降らし袖」などと呼ばれているが、袖を通してみるといかに動きやすいかということが実感できるのだ。袖全体を細く、アームホールを小さくとっているが、シャツと同じような袖付けにすることによって、機能性と運動性が生まれるのである。そのために自然に生まれるシワ、あれはナポリ・スーツの象徴なのだ。