「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?

ソックスを初めてはいたのは水戸黄門様

ファッション・トリビア蘊蓄学:ソックスを初めてはいたのは水戸黄門様

日本で初めてラーメンを食したのは、江戸時代前期の第2代水戸藩主であった徳川光圀公(1628~1700)、すなわち水戸黄門とされるが、黄門様はソックスを初めてはいた御仁でもあったようだ。先年、黄門様の遺品の中からメリヤスの靴下が発見され、これが日本で現存する最古のニット製品であると認定されたのである。黄門様の生きていた時代の日本にはニット製品を作るような機械はなく、これはおそらく外国から持ち込まれたものであっただろうと思われるのだ。メリヤスというのはポルトガル語の「メイアス」またスペイン語の「メディアス」が転訛したもので、ともに「編み物」の意であるが、原義は「靴下」ということ。こうしたメリヤスは徳川時代初期にスペインから伝わり、その後オランダ人によって技法が伝えられて日本でも流行するようになるが、その最も初期の使い手が黄門様であったようなのだ。ちなみに黄門様の諸国漫遊は、実際にはなかったというのが真相。