「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?

トレンチコートは戦場から生まれた

ファッション・トリビア蘊蓄学:トレンチコートは戦場から生まれた

トレンチコートの「トレンチ」って何? そんな質問をしてくる若い人たちがこのごろ多い。女性の間のショート・トレンチ人気でそんな疑問が湧いたのだろうけれど、トレンチとは「塹壕」の意味と答えても、今度はこれがわからなくなっている。「塹壕」というのは、戦場で敵の弾を除けるために地面に横長の溝を掘り、その土で壁を築いたいわば砦のようなもの。それがなぜコートと関係があるのかというと、時は第1次世界大戦(1914~1918)中のこと、ヨーロッパ大陸においてイギリスとフランスを中心とする連合軍とドイツが、長い時間に渡ってにらみ合ったまま動かなくなった。雨期のこととて塹壕内はぬかるみ、兵士の苦悩は増すばかり。この窮状を見かねた英国陸軍は、ついにレインコートの名門バーバリー社に塹壕戦用のコートを発注。こうしてできあがったのがトレンチコートというわけなのだが、その完成は戦争も終わりを迎えた1918年のことだったとされる。