「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?
ネクタイを初めて着けた日本人はジョン万次郎
ネクタイが、ルイ14世(在位1638~1715)の愛好したクロアティア兵士の首飾りの布から誕生したというのは有名な話。ネクタイは今でも欧米では「クラヴァット」と呼ばれるが、これはクロアティアが訛ったものなのだ。では日本人で初めてネクタイ、いやクラヴァットを着けたのは誰だろう?それは中浜万次郎、通称ジョン万次郎ということになっている。万次郎は土佐・中ノ浜の生まれで、14歳の時、出漁中に遭難し、アメリカの捕鯨船に救助されてアメリカに渡る。1851(嘉永4)年、24歳で日本に帰り、通訳などとして働くという数奇な運命を辿った人物だが、日本人としてはおそらく初めてネクタイを着けた、と思われるのだ。ただし、万次郎が用いたネクタイは現在見るような結び下げ式のものではない。それはフォアインハンドなどと呼ばれ、四頭立て馬車(フォアインハンド)の御者のネックウエアのあしらいを元に、1890年ごろ誕生しているのだから・・・・・・。