「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?
ハンカチの流行はナポレオン王妃ジョセフィーヌの欠け歯隠しから
ファッションには「上流社会(の人々)、社交界(の人々)」といった意味もあって、これは昔、流行が上流社会の習慣を真似ることによって生まれたということを表わしている。上流社会といえばフランスの宮廷が連想され、実際ここには流行を生み出すファッションリーダーともいうべき女性がたくさんいた。たとえばルイ15世の愛人であったポンパドゥール夫人(1721~64)やルイ16世王妃マリー・アントワネット(1755~93)、そしてナポレオン1世の皇后ジョセフィーヌ(1763~1814)。ここで面白いのはジョセフィーヌの日常生活からある流行が生まれたという事実なのだ。ジョセフィーヌは前歯が欠けていたため、笑う時には人に見られないように必ずハンカチを口元に当てた。この仕草が、今風にいえば「カワイイ!」というわけで、ナポレオン・ボナパルト治世下のフランス宮廷内に広がり、やがて全土の淑女たちまでがハンカチを口に当てるようになったという。