服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。

セックス・ピストルズに代表されるパンク・ロックから流行

年代別『流行ファッション』物語:セックス・ピストルズに代表されるパンク・ロックから流行

「パンク・ファッション」1977~1978

「パンク」という奇妙なファッション風俗が日本に上陸したのは1977(昭和52)年のことである。髪の毛をおっ立てて激しいメイクをし、黒ずくめの姿で歩く少年・少女たちは、本場のパンクスに比べると大人しいものだったけれど、それでも周りの大人たちを驚かせるには十分な迫力を持っていた。パンクとは元々「意気地なし、腰抜け、弱虫」といった意味の俗語で、自らをそう名乗るロンドンのアートスクールの学生たちによって1972年頃から始まった風俗だというが、我々が知ったのはやはりセックス・ピストルズに代表されるパンク・ロックからだった。暴力的な歌詞と過激なサウンドで知られるパンク・ロックもまた始まりはニューヨークの「ラモーンズ」から生まれたとされるが、日本のパンクスたちはそんなことにはお構いなく、ただのストリート・ファッションのひとつとして、ひたすらこれを消化していったのだ。