服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。

戦後シネモードの第1号はイギリス映画『赤い靴』

年代別『流行ファッション』物語:戦後シネモードの第1号はイギリス映画『赤い靴』

「シネモード」1950

1950年代、娯楽の王者は映画だった。内外の映画から生まれるファッションは「シネモード」などと呼ばれ、大きな流行を作っていった。戦後シネモードの第1号はイギリス映画『赤い靴』(昭和25)からとされ、ここから赤い靴が流行したというが、なんといっても最大のヒットとなったのは日本映画『君の名は』(昭和28)から生まれた真知子巻きと、『ローマの休日』『麗しのサブリナ』(昭和29)などから生まれた一連の「ヘプバーン・スタイル」であっただろう。とりわけオードリー・ヘプバーンの主演した映画からはサブリナ・パンツやサブリナ・シューズといったヒット商品が生まれ、彼女の短い髪型は「ヘプバーン・カット」として大流行を見る。その他『悲しみよ今日は』(昭和33)からはジーン・セバーグの「セシール・カット」、『三月生まれ』(昭和34)からはジャクリーヌ・ササールが着た「ササール・コート」の流行が誕生している。