服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。

オイルショックから始まった「省エネ」ファッション

年代別『流行ファッション』物語:オイルショックから始まった「省エネ」ファッション

「インベストメント・クロージング」1973

1970年代前半のファッションにおけるキーワードをひとつだけ挙げよ、と問われたら、間違いなく「インベストメント・クロージング」と答えるだろう。インベストメントは「投資」の意味で、それはつまり「投資に価する衣料」ということになる。1973(昭和48)年10月に起こったオイルショックで、人々の消費意識は一変した。それまでの「消費は美徳」といわれた考え方が、「省エネ」の意識に取って代わったのだ。ファッション商品に対しても、多少のお金がかかっても十分に長持ちし、ステータスも満たせるものを求めようとする風潮が高まってきた。こうした考え方にふさわしい衣料を「インベストメント・クロージング」と呼んだもので、具体的には一流ブランド品や高級毛皮製品などが挙げられる。これを契機に台頭してきたのが「一流品とは? 本物とは何ぞや」という考え方で、ここから世界の一流品を紹介する70年代後半の「カタログ・ブーム」も始まったのだ。