日本のファッション用語には海外でまったく通じないものが沢山ある。たわむれに抽出したところ、それは400語ほどにも達した。その中から和製英語に属するものを中心に200語あまりを抜粋。今回ここに紹介するのはそこから厳選した用語の類で、その多くはすでに一般化しているから、国内で使用する限りはまったく問題ないのだが、いざ海外でという時に困ることが多い。日本だけのおかしなファッション用語というのも、これはこれで面白いのだが・・・・・。

アイビー・ストラップ

海外でまったく通用しないファッション用語:アイビー・ストラップ

アイビー・ストラップ
ivy strap

正しくは
【バックルド・バック・ストラップ】
buckled back strap

アイビー調のパンツや、いわゆるアイビー・キャップの後ろの部分につく留め具。日本語でいうところの「尾錠(美錠)」のことで、1960年代に流行したアイビー・ルックのパンツや帽子に特徴的に見られたところから、日本ではアイビー・ストラップと呼ばれるようになったもの。正しくはバックルド・バック・ストラップで、単にバック・ストラップとかバックルド・ストラップともいう。

一世を風靡したアイビー・ルックが、日本にはじめて紹介されたのは1954(昭和29)年のこととされている。当時、服飾メーカーVANヂャケットの社長であった石津謙介が、ファッション雑誌「男の服飾」(後のメンズクラブ)に、アメリカのアイビー・リーグのファッション事情を解説した。翌年、IACD(国際衣服デザイナー協会)がアイビー・リーグ・モデルという新しいスーツ型を発表し、日本では1959年にアイビー・スーツを発売。1960年から売れはじめる。ここから日本のアイビー・ルックの大ブームがはじまった。そして、なんにでもアイビーの名をつけて売り出したのだ。アイビー・キャップ、ベルト、シャツなどがそれで、なかにアイビー・スラックスというのもあった。当時はパンツよりもスラックスというほうが一般的だった。このパンツの後ろ、ウエストバンドの下部中央につけられていた尾錠がアイビー・ストラップ。背広のベストでおなじみのデザインだが、これを正式にバックルド・バック・ストラップなどとは呼ばず、アイビー・ストラップと呼んだ。なお、尾錠のことを美錠と書くこともあるが、これは日本の昔の馬具の金具「美女金」からきている。