服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。
アロハシャツにサングラス
1940年代:「アメリカン・スタイル」1945~1950
戦後婦人服のファッションリーダー第1号となったのは、パンパンと呼ばれる進駐軍兵士相手の私娼たちだった。彼女たちはアメリカ製の派手な色柄のフレアースカートなどを着用し、真っ赤な口紅、どぎついアイラインといったメイクで客の気を引いた。一般の女性たちが「更生服」などと呼ばれるキモノを改造した洋服やモンペに身を固めている時代にあって、こうしたパンパン・ルックは安っぽくてペラペラした印象のものではあったけれど、十分に魅力的なファッションでもあった。そこには戦勝国アメリカに対するあこがれの気分があったのだ。それは男たちも同様で、日系二世を気取るニセニセという不良青年が登場し、リーゼントヘアにサングラス、アロハシャツといった当時最新のアメリカ風俗を積極的に取り入れた。これが後に「アプレゲール(戦後派)」と呼ばれるようになるが、良くも悪くも戦後間もなくのころはアメリカン・スタイル一辺倒の時代が続いたのである。