「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?

ブラジャーは当初、胸を偏平に見せるための道具とされた

ファッション・トリビア蘊蓄学:ブラジャーは当初、胸を偏平に見せるための道具とされた

フランス語で「胸衣」を意味するブラジェールから転じて、アメリカでブラジャーという言葉が誕生したのは1914年とも1916年ごろともされている。原義は「乳押さえ」ということだが、本来は乳房の形を整えるのが目的とされた。この新しい下着が流行するようになるのは、第1次世界大戦が終わった1920年代のこと。勝利に沸くアメリカの享楽的な世相の中で、フラッパー(お転婆娘)と呼ばれる女の子たちが登場し、彼女たちがブラジャーをことのほか愛用したのだ。髪を短く切り、真っ赤な口紅とショートスカートで活発に動き回るフラッパーガールたちのファッションを「ボーイッシュ・スタイル」と呼んだのもこのころのことだが、まさしく少年のような姿態を彼女たちは好んだのである。となると豊満な胸というのは邪魔になる。そこで少年のように胸を偏平に見せるために、このブラジャーがもてはやされるようになったのだ。それはまさに「乳押さえ」そのものだったといえる。