服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。

若者たちによる反体制的な風俗のひとつ

年代別『流行ファッション』物語:若者たちによる反体制的な風俗のひとつ

「ダウンタウン・フードラム」1954~1961

戦後のイギリスに誕生したアングリー・ヤングメンの波が、アメリカに上陸して生まれたのが「ダウンタウン・フードラム」。いわば「下町のアンチャン」スタイルという意味で、これも元は下層階級の少年たちが作り出したもの。アメリカには元々若者たちによる反体制的な風俗があり、第1次大戦後のフラッパーや今次大戦中のズーティーズといった動きがその代表的なものとされるが、ここではスクリーンの中の不良たちが彼らのお手本となった。その代表がマーロン・ブランドでありジェームズ・ディーンであった。映画『乱暴者』(昭和29)などで知られるマーロン・ブランドは当時の「暴走族」少年たちに多大な影響を与え、ジェームズ・ディーンはそれこそ「理由なき反抗」世代のアイドルとされた。これに続いたのがエルヴィス・プレスリーに代表されるロックンロール・スターたち。こうしたアメリカの不良風俗が、海を越えて日本の若者たちに受け入れられたことはいうまでもない。