服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。
カーナビー・ストリートから流行したモッズ
「モッズ・ルック」1966
モッズとは本来テディ・ボーイへの反発として生まれたモダンジャズ好みの若者集団を指す。彼らはロッカーズと呼ばれる硬派のオートバイ族と抗争を繰り返し、世間的に批判を浴びたが、その抗争も終わった1965年頃から、モッズ・ルックと呼ばれるファッションが独り歩きするようになる。モッズに注目していたジョン・スティーブンというデザイナーが、ロンドンのカーナビー・ストリートに小さなブティックを開き、思い切り遊び心を加えたモッズ・ファッションを売り出したのだ。ワイドなネクタイをあしらった花柄のシャツに細身のパンツ、ダッチキャップと呼ばれる帽子におばあちゃん風のグラニーグラスといった格好はユニセックス・ルックそのもので、これがイギリスで大流行。1966年1月にはアメリカに上陸し、その年の夏には日本にも突如あらわれた。これはファド(一時的な流行)に終わったけれど、翌年の「ピーコック革命」の前哨ともなったのである。