服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。

テレビCM「イエイエ」が大評判だった

年代別『流行ファッション』物語:テレビCM「イエイエ」が大評判だった

「ポップ・ファッション」1965~1969

60年代を象徴する美術表現「ポップ・アート」は、1962年のロイ・リキテンスタインの登場で幕を開けた。続くアンディ・ウォーホルやジャスパー・ジョーンズらの活躍によって、ニューヨーク生まれのポップ・アートは現代美術の方向を決定づけたのである。これがファッションに影響を及ぼさないわけがない。65年のサンローランの「モンドリアン・ルック」やクレージュの「スペース・ルック」はまさにポップ・アートのモード化であり、66年にカルダンが発表した「コスモコール・ルック」もこの影響を強く受けている。それらに見る鮮やかな色使いと弾むようなデザイン感覚は、ポップの語源どおりたちまち大衆化し、街にポップ・ファッションの大波を作り出した。大きなトンボメガネにどぎついポップ・メイクのミニスカ・ガール。67年にヒットしたレナウンのテレビCM「イエイエ」は、そうした女の子たちをブラウン管に躍動させて大評判をとった。