服装の流行は、まず「モード」として現われる。ここでいうモードとは「最新型」という意味で、デザイナーによる「創作」などがここに含まれる。これが流行に敏感な人たちの支持を得て拡大すると、「ファッション」と呼ばれるようになるのだ。ここでのファッションとはまさしく「流行」の意味。そして、ファッションがさらに普及し、大衆の間で定着を見るようになると、これは「スタイル」という言葉に置き換わる。スタイルとは、すなわち「定型」とか「様式」の意味。これを「流行の三角構造」などと呼んでおり、ファッション界では常識的な考え方となっているのだが、実際にはモード、ファッション、スタイルの使い分けはこれほど明確には行われてはいない。近ごろの流行を見ていると、モードとして生まれてはみたけれど、ファッションになるまでに消滅してしまう例が驚くほど多いことに気づく。これを「ファド」とか「クレイズ」と呼ぶことも覚えておきたい。

男の子たちがミニスカートをはいて街を闊歩

年代別『流行ファッション』物語:男の子たちがミニスカートをはいて街を闊歩

「ユニセックス・ルック」1966~1969

それまでの価値観が音を立てるようにして崩れ始めたのは、1965(昭和40)年を過ぎてからのことだろうか。モラルもルールもぶっ飛ばせ! とばかりに、ヤングパワーの爆発が始まったのである。なかでも注目すべきは男女の性差を打ち破る動きだった。これを「ユニセックス」とか「トランスセックス」などといい、その後のファッションの方向性に大きな影響を与えるようになる。男女が同じような服を着て、後ろから見たら男か女かわからないといわれるようになったのは、66年のモッズ・ルックのころからのこと。ビートルズの影響で男の子も髪を伸ばすようになり、男女の性差はますます曖昧なものになってゆく。そんな中、67年に銀座ワシントン靴店で行われたイラストレーター長沢節による「モノセックス」と題したファッションショーは衝撃的なものだった。なんと男の子たちにミニスカートをはかせて街を闊歩させたのである。