「取るに足らぬこと、些細なこと」を英語でトリビア trivia といい、当時のテレビ番組『トリビアの泉』以来、大変な雑学、蘊蓄ブームを巻き起こすようになっているが、ファッションの世界にはこれに類するトリビアがことのほか多く見受けられる。たとえば「腹巻き」は16世紀のヨーロッパで生まれ、日本では明治時代にキモノから洋服に変化したときに帯の代わりに用いられたという。またトートバッグはもともとキャンプ地で水を運ぶために使われていた、というのもこれを知らない人にとっては「目からウロコ」の話となるだろう。ファッションに関するトリビアは語源や発生にまつわる話が多いけれど、それを知っているとつい誰かに自慢したくなるものだ。それこそトリビアのトリビアたるゆえんなのだが、あの女性ファッション誌『JJ』のタイトルが「女性自身」のアルファベット綴りの略からきているって知っていました?

「麻」という原料はそもそもない

ファッション・トリビア蘊蓄学:「麻」という原料はそもそもない

夏の代表的な洋服素材に「麻」があるが、素材の原料としての「麻」というものは存在しない。「麻」と呼ばれるものには三十ほどの種類があり、その中の「亜麻(あま)」と「苧麻(ちょま)」だけを「麻」と表示することが、衣料品の品質表示法で認められているのだ。「亜麻」は英語ではリネンといい、「苧麻」はラミーという。ご存じのようにリネンはリンネルとも呼ばれ、なめらかで強く、光沢感のある生地。対してラミーはサラッとした感じの硬い生地で、夏用のシャツやハンカチなどに見られる。このように海外ではまったく別の素材として分けているのだが、日本では麻の仲間ということでいっしょくたに表示するものだから、要らぬ誤解を招くのである。この他に最近では「大麻(おおあさ)」という素材が人気を集めるようになっているが、これは法律の関係上、「麻」とは表示できない。ちなみに大麻は「たいま」とも呼び、英語ではヘンプというが、これはいうまでもなく例のマリファナの原料となっている。